お前が死んでも何も変わらない。
玄奘三蔵(西遊記)
だが、お前が生きて、変わるものもある。
他部署の同僚が突然亡くなった。年齢は私の1つ上。自ら命を絶ったらしい。
朝の朝礼で社長から言われて知った。言葉が出なかった。同部署の人たちもいつもと変わらなかったと感じていたそうだ。特に長時間労働をしていたわけでもない。
真相は分からない。プライベートでいろいろあったのかもしれない、とのことだった。
(一応断っておくが、私の職場は超ブラックというわけではなく、このようなことが起きたのを耳にしたことはない)
そこまで親しかったわけではないが、学生時代から知っていたから、もう10年ぐらいになる。私が職場を転々としているからだが、一緒に仕事をするのは2回目になる。
その人は今の職場で働き初めてから10年。あまりに職場の人たちと関わりすぎていた。
その日はたまたま忙しく、帰ってからもZoom会議があり慌ただしくて、逆に良かったかもしれない。
会議が終わり、妻と話していても、あのときの朝礼がフラッシュバックしてきた。妻に「大丈夫?」と言われ、はっと我に返った。
一緒に仕事をした期間が短い私でさえもこうなるのだから、ずっと仕事をしてきた人たちのことを思うと、胸が痛む。
葬儀にも参列したが、両親族の悲嘆も燦々たるものであった。親族間の関係も、良い方向へ向かっていないように感じられた。
残された我々も、どうすれば気づけたのか、どうすれば止められたのかと、どうすれば…と後悔の渦に巻き込まれている。
自殺がこれほどまでに残された人々を不幸にするのか、と思い知らされた。
そうしてしまった同僚を責めることはできない。
でも、それでも…
たった一人しかいない自分を、たった一度しかない一生を、ほんとうに生かさなかったら、人間生まれてきた甲斐がないじゃないか。
山本有三(路傍の石)
終わらせる勇気があるなら 続きを選ぶ恐怖にも勝てる
続きを進む恐怖の途中 続きがくれる勇気にも出会う
消えない悲しみがあるなら 生き続ける意味だってあるだろう
どうせいつか終わる旅を 僕と一緒に歌おう
藤原基央(BUMP OF CHICKEN “HAPPY”より)
その人のスマホの履歴に、心の相談室への電話記録があった。ドアの鍵も開いていた。まるで誰かに探してほしいかのように。
辛くても、それでも生きたかった。
もっと近づくべきであった。もっと寄り添うべきであった。
答えは出ない。その答えを探す痛みとともに、今日も私達は進んでいく。
R.I.P>Mr. A
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