こんにちは、SkyWalkerです。今日はカードマジック事典についての雑談です。
カードマジック事典 新装版 単行本(ソフトカバー) – 2016/10/8
高木 重朗 (編集)
カードマジック事典という本
高木重朗氏らが1983年に出版した、当時のカードマジックを体系的にまとめた本です。
名著なのですが、最近フリマアプリで安く売られていたり、マジックショップやAmazonのレビューでも低評価を見かけました。
そのような方々の気持ちも分からなくはないのですが、「ちょ、待てよ」と言いたくなってしまうのでした。
事典とは何か
そもそも事典とはなんでしょう。
編集方針にしたがって物や人物、ことがらを表す言葉を収集、抽出し、それらを見出しとして音順あるいは主題によって排列し、それぞれについて簡潔に解説したレファレンスブック。
図書館情報学用語辞典第5版
レファレンスブックとは、
対象とする分野の関係情報を記事として多数の項目にまとめ、それらを音順や体系順で排列することによって、特定の項目を容易に調べられるようにした図書。参考図書ともいう。
図書館情報学用語辞典第5版
独学の技法をまとめた「独学大全」という凄まじい本に、第一のレファレンスツールとして事典が取り上げられています。
事典は、広大な知識の海から膨大な数の専門家というフィルターによってろ過され、十分な時間をかけて抽出された精製物(知の塩)である。最新の知見を求めるには向いていないが、その分野の欠くべからざる基礎を成す知識の一つひとつにダイレクトに到達できる検索機能まで備えている。
独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法
Kindle版 p. 327
独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法 単行本(ソフトカバー) – 2020/9/29
読書猿 (著)
つまり、事典とは「ある物事を名称順や主題別にしたがって排列し、それぞれを簡潔に解説し、また容易に検索できる機能を持った本」です。
カードマジック事典の問題点
上記は学術的な事典の意味です。カードマジック事典に適応すべきか議論があるかもしれませんが、「事典」本来の役割に照らし合わせるなら
レファレンスツールであるのに、索引がない
ことが最も大きな問題です。
目次の現象から調べなくてはいけないのは手間です。現象別には並んでいますが、トリック名や考案者名がない作品もあるため、これも検索しづらさを助長しています。同様に感じる愛好家も多いようです。
大変ありがたいことに、Liliputさんが独自に索引や原案の名前をリストで公開しておられます。この索引を併用すれば、ほぼ事典としての機能が整うことになります。
私は一度さらっと読んだことがあるだけなのですが、間違っている記述もあるようです(ルーンの帽子より)。ただこれは書籍全般に起こり得ることで、
事典を使う時は必ず複数の事典に当たるべきである。理由の一つは、事典は少なからず間違っているからだ。
独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法
Kindle版 p. 348
簡潔な記述はレファレンスブックならでは
「記載が簡潔すぎてわからない!不親切!」という内容のレビューを見かけましたが、それは事典という性質上、仕方がありません。簡潔であるからこそ、調べ物の入り口として最適であるとも言えます。
そもそもこの本は初心者向けの解説書ではありません。著者らはその後、初学者でも読める本として「カードマジック入門事典」を出版し、まえがきにもこのように書いています。
これ(カードマジック事典)は事典であり、解説書ではないので、初心者には難しい箇所も多くある。
カードマジック入門辞典
まえがき
カードマジック入門事典 単行本 – 1987/3/1
高木 重朗 (編集), 麦谷 真里 (編集)
もし初心者用のカードマジック本をお探しなら、私見をこちらにまとめていますので、ご参考まで。
カードマジックを調べるには良本
初心者を脱して中級者以降になると、この本に書かれてあるテーマのマジックに必ず出会うことになります。その時に「原案はどうだったっけ?」とさっと調べる際には最適です。
初心者の時には「自分ができるマジック」が中心になりますが、レベルが上がると「こんな現象のマジックをしてみたい」と思うことも出てきます。現象別に目次を眺め、それぞれの手順を追うことが刺激になります。
たまに見返してみると、全然気づかなかった面白いトリックが見つかることもあります。
カードマジック事典だけではなく、最近出版された図解カードマジック大事典とも合わせて読むと、さらに面白いと思います。
図解 カードマジック大事典 新装版 単行本 – 2020/2/25
宮中 桂煥 (著), TON・おのさか (編集)
書籍一冊に全ては書かれていない
独学大全を読んでいて目から鱗だったのですが、
一冊という単位は書籍流通の単位であって、我々の知的営為の単位ではない。何かを知りたい時、これさえあれば足りる、ぴったりの一冊が存在することはまずない。
独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法
Kindle版 p.431
複数の本を横断的に読むことが必須となります。
まとめ
まとめると
- 事典はある物事を名称順や主題別にしたがって排列し、それぞれを簡潔に解説し、また容易に検索できる機能を持った本である
- カードマジック事典は検索機能が乏しいところが問題である
- カードマジックを調べる際の入り口には最適である
- 解説書ではないため、初学者は他の書籍にあたるほうが良い
- 複数の本を横断的に読む方が良い
事典という役割を意識すると、この本は大変貴重な本なのです。辛辣なコメントを見ていると、思わず言いたくなってしまうのですよ。
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