最近、プレモニションに関しての投稿を見かけました。
夜勤明け、ふとこのトリックを思い出し、ふらふらした頭でダイソーに向かい、プレモニション用のデックを作ってしまいました。変なテンションだった…笑
久しぶりにカードマジック事典で原案を読み直し、トランプ奇術で詳細な解説を見つけ、面白かったのでご紹介します。
現象
観客にジョーカーを除いた52枚のトランプのうち、1枚を自由に思い浮かべてもらいます。何を思い浮かべてもらってもかまいません。他の観客にも分かるように、そのトランプの名前を言ってもらいます。
観客に前に出てきてもらい、一組のトランプを渡します。表向きに1枚ずつ配り、先程思い浮かべたトランプが出てきたら、脇に出してもらうようにします。
観客が配っていくと、全て配り終えてしまい、先ほどのトランプが出てきません。
トランプを数えてもらうと、51枚しかありません。1枚トランプが足りないのです。
マジシャンは「昨晩、虫の知らせがあり、1枚だけトランプを抜いておいたのです」と言い、ポケットから1枚トランプを取り出します。
それがまさしく観客が思い浮かべたトランプです。
作品について
プレモニション Premonition=予感というタイトルですが、日本では「虫の知らせ」と訳されています。インドのカルカッタ生まれのユダヤ人マジシャン、エディー・ジョセフ Eddie Joseph(1899-1974)が1949年に発表しました(1)。
同じような現象は古くからあり、1896年のDer moderne Kartenkünstler(現代のカードアーティスト)というドイツ語の本に、Experto credite!というタイトルで、観客に宣言してもらった1枚のカードが消え、その1枚をマジシャンが取り出すマジックが紹介されています(2)。
メンタルマジック事典にステファン・ミンチの言葉「奇術師以外にこんな発想はできないだろう」「ふつうの観客には、予言が単に当たっていることをみせるほうがずっと効果的」(3)が紹介されています。
松田道弘氏は「このトリックがめったに上演されない理由ははっきりしている。準備が面倒な上に間違いやすく」とネガティブに書いていますが、「レクチャーの席でのオープニング・トリックには最高であるとしか言いようがない」(3)と持ち上げています笑。どっち?笑
私も高校生ぐらいのときに頑張って準備して、家族の前で演じ、思いっきり失敗した思い出があり笑、中々手が出せずにいました。
今回原案を見直してみると、意外と覚えることは少なく、今では十分演じられるだろう、という印象でした。
詳細な解説
誰かが高木重朗氏の「トランプ奇術」(ひばり書房)にこのトリックが収録されている、と言っていたのを思い出し、チェックしてみました。
なんと、10ページ以上に渡って詳細に解説されていました。覚え方や演じ方、さまざまなアイディアもあり驚嘆です。
やはりカードマジック事典だけでは難しいですね…ちゃんとした解説は必要だと痛感しました。
トランプ奇術―初心者からハイテクニシャンまで (ホーム・ライブラリー) 単行本 – 1987/6/1
高木 重朗 (著)
Vanished or Gone
バリエーションとして、ピーター・ダフィーPeter Duffieの“Vanished or Gone”は面白いです。上記とほぼ同じ現象ですが、準備と演技が少し楽になっていること、最後までトランプの名前を聞かなくて良いことが特徴です。
マジェイアの魔法都市案内で紹介され(”Vanished of Gone”「プレモニション」に関連して)、どうやるのだろうとずっと不思議に思っていました。
20年後ぐらいに、このトリックが記載されているEffortless Card MagicがLybrary.comで販売されているのを見つけました。
Vanished or Gone自体が単体で販売されているのですが、これを買うよりもEffortless Card Magicの方が安かったので購入しました。
これ、相当賢いですし、演技も楽になっています。英語でそのまま演じられないので、自分でセリフを考える必要はありますが、それでも演じる価値は十分あります。
最後に
メンタルマジック事典でも「効果の大きさはたしか」(3)とも書いています。
ステファン・ミンチの意見も分からなくはないのですが、いわゆる「サスペンス」として演じるのであれば、プレモニションも悪くないと思います。
実際、高木氏も「演じてみるとその素晴らしさに驚かれると信じます」(4)と書いています。
どこかで演じる機会があれば演じたいですね。
参考
- Eddie Joseph-Magicpedia
- Premonition & Named Vanish, Conjuring Archive.
- メンタルマジック事典, 松田道弘, p77, 東京堂出版.
- トランプ奇術, 高木重朗, p212, ひばり書房.
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