こんにちは、SkyWalkerです。
「レストラン・マジシャンズ・ガイドブック」という、テーブルホッピングのマジシャン向けの素晴らしい本があります。その中の”マジック哲学”という章に、次のような文があります。
本書はマジックの哲学について書いたものではありませんが、少なくとも自分のマジックを支える哲学は持っておくべきです。(中略)そこで考えたことが、演技のあらゆる面に影響するからです。私の持っているマジック哲学は、私が演じるマジック、私の考える手順、そして口にするセリフの全てに影響します。
レストラン・マジシャンズ・ガイドブック 単行本(ソフトカバー) – 2014/10/10
ジェリー・マグレガー (著), ジム・ペース (著), 滝沢敦 (翻訳)
自分自身の哲学を考える出発点として、「なぜマジックを演じるのか」について考察することは有益です。
きっかけ
この話題は私が中学生ぐらいの時、マジェイアの魔法都市案内で語られているのを見たことがきっかけです。「あなたはなぜマジックを見せるのですか?」というタイトルで、ラウンドテーブルに載っていた記事から触発されたものです。
当時はここまでマジックにハマるとは思っておらず、上記記事の「1. 夢を与えたいから」なんて思っていた時期もありました。マジェイア氏はこの記事の中で、1に対して相当批判しているのですが^^;
ただ、大人になった今では「夢を与える」ことはできないまでも、「郷愁」「ロマン」「感動」といった感情を呼び起こすことはあると思っています。
2.「すごーい」と思われたいから。または人気者になりたいから
3. アイデンティティの維持のため。
最近は動画・SNS全盛時代だからこそですが、明らかにこれ目的であろう方々もたくさん見受けられます。特に、優越感が欲しくてマジックをやっている方は、観客がそれを敏感に感じ取るため、続けていくのは難しいと思います。
この記事では「4. なんだか知らんが好きだから」という、冗談めかした理由で締めくくられているのですが、自分もそんな面がありそうです。
振り返ると子どもの頃から自然現象でも、科学の実験でも「なんでそんなことが起こるの?どんな仕組みになっているの?」という好奇心は旺盛でした。友人からマジックを見せられたときもきれいに引っかかり、それが単純で合理的な手段=タネで起こることに、非常に興味が湧きました。
マジックを知ること、演じること
好奇心だけでは、タネやサトルティを知ってしまったら別に演じなくても満足してしまいそうですが、なぜ私は秘密を知ってしまったマジックを演じるのでしょう。
タネを知って自分でも演じてみると、観客が驚いてくれることを面白く感じていました。でも、それは観客に対して優越性を求めているものではないのです。
最近注目しているマジシャンの一人に、サプライズコーディネーターいっぺいさんがおられます。下記の動画の8分10秒ぐらいの所に、ハッとさせられる言葉がありました。
ここがマジックの一番本質の部分です。
不思議で驚いて!ではなく、この楽しい時間を作りたいんだよ、ということをアピールできる。
マジックを通して、今このかけがえのない時間を、観客と一緒に楽しみたい、というのが私がマジックを演じる理由です。しかも、それは自分自身も楽しんでいることが前提条件となります。
プロはひどい観客がいる場でも、なんとか演技しなければいけないこともありますが、アマチュアはTPOに応じて「マジックをしない」という選択肢もあります。その場がマジックがなくても盛り上がっているのであれば、無理してやらなくても良いのです。
トリックの選択
この目的がはっきりすると、自ずと自分が選択するトリックが定まります。
自分が楽しめなくてはいけないのですから、自分の好みとかけ離れたトリックは選択肢から外れます。
いくら不思議でも、テレビでプロがやっていたとしても、自分に合わなければレパートリーにはなり得ません。
また、そのトリックの現象を重視するようになりました。タネ(技術的、準備の大変さなど含む)は自分が自信を持って演技できるか、観客に楽しんでもらえるか、といった観点で実演可能かを考えるようになりました。
「自分がこのトリックを修得するのにこんなに時間をかけたのだから」という視点は、観客目線からは重要ではありません。
プロや実演販売員は、日程によっては十分練習できないトリックや、自分と合わないトリックもあるかもしれませんが、アマチュアは自分が無理せずに実演でき、かつ自分に合うトリックをチョイスできます。しかも、自分が納得できるまで練習や台本作りができます。
ここがアマチュアの贅沢なところでしょう。
最後に
というわけで、自分がなぜマジックを演じるのかを考察してみました。
自分がなぜマジックが好きなのか。なぜマジックを演じるのか。
自身の貴重な時間をなぜここまでマジックに割きたいのか。
一度考えてみてはいかがでしょう。
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