上手は下手の手本、
下手は上手の手本とわきまえ工夫すべし。
世阿弥『現代語訳 風姿花伝』
以前マジェイアの魔法都市案内の箴言集に「上手は下手の見本なり、下手は上手の見本なり」という言葉を見つけ、いい言葉やなと思っていました。
その後いろんな人が同じようなことを言っているのを見つけました。
半分は先輩から教えてもらう、半分は部下から教えてもらう。
松下幸之助
自分も相手に育ててもらっている、という意識を持てる人が、すぐれた先生、コーチ、リーダーです。お互いが、一方的でない関係を持てるのが、最もいい関係です。生徒から学べる先生は、すばらしい生徒を育てることのできる先生です。
中谷彰宏
上記の風姿花伝の箇所を読むと、上手も下手も互いに尋ね合うべきであると書かれています。
上手は慢心があると自分の欠点にも気づかない。下手の中に良い面が見えたとしても、自分に思い上がりがあればそこから学ぶこともないだろう。
下手にとっては、上手の中に欠点を見出したとき、あれほどの上手でさえも悪い面があれば、初心者の自分にはさらに欠点も多いはずだと悟る。逆に自分はあれほど悪い芸はしないと慢心を持てば、自分の長所もわきまえなくなる。
さればたとえ上手であっても、思い上がりは能を下げる。いわんや未熟者の思い上がりはなおさらのこと。よくよく公案し考えることだ。上手は下手の手本、下手は上手の手本とわきまえ工夫すべし。下手の良いところを、上手が自分の得意芸の中に取り入れることはこれ以上ない理想的な方法である。人の悪いところに気付くだけでも自分の勉強になるというのに、ましてや良いところについては、言うまでもない。「稽古は強くあれ、しかし慢心はもつな」とは、まさにこのことである。
世阿弥『現代語訳 風姿花伝』
仕事で経験を積んでくると、後輩からの質問も多く受け、適切に答えられるようになってきます。
しかし、後輩との会話の中で、今まで気づかなかった点や、自分の勉強不足の点が見えてくることがあります。そのときに受け流してしまうのか、謙虚にもう一度調べて勉強し直すかで、自分がさらに成長できるかどうかが決まると思います。
後輩に分からない点を質問されたときに、正直に「ちょっと分からないから、調べてくるよ」と言えるか、適当にごまかすかが分かれ目になります。
どこまで行っても謙虚に勉強し続ける姿勢を持ちたい。
現代語訳 風姿花伝 単行本 – 2005/1/21
世阿弥 (著), 水野 聡 (翻訳)
「能」の本ですが、現在にも通用する考え方が学べます。
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