全ての人の手に、善または悪をなす巨大な力が委ねられている。 その力とは、その人の人生が周りに与える無言の、無意識の、見えざる影響である。 見せかけではない真のあなた自身の影響が、常に周囲に放たれているのだ。
ウィリアム・ジョージ・ジョーダン(米国のエッセイスト、1864-1928)『The Majesty of Calmness 平穏の威厳』より
人格主義と個性主義
「7つの習慣」の中に、人格主義と個性主義の話が出てきます。上記の言葉はその中で引用されていたものです。
人格主義とは「誠意、謙虚、誠実、勇気、正義、忍耐、勤勉、質素、節制、黄金律など、人間の内面にある人格的なこと」が成功の条件であるとする主義のことです。これに対し、個性主義が謳う成功の条件は「個性、社会的イメージ、態度・行動、スキル、テクニックなどによって、人間関係を円滑にすることから生まれる」と考えられています(完訳 7つの習慣 人格主義の回復, スティーブン・R・コヴィー, p8-9, キングベアー出版)。
結論から言うと、個性主義は表面的な解決しかもたらさず、見える傷にバンドエイドを貼るようなもので、その元にある疾患を治すことはできません。結局、自分自身の人格を変えることでしか根本的な解決は得られないのです。
人間関係を築くときにもっとも大切なのは、あなたが何を言うか、どう行動するかではない。あなたがどういう人間かということだ。
スティーブン・R・コヴィー. 完訳 7つの習慣 人格主義の回復 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.3848-3850). キングベアー出版. Kindle 版.
動作は本心を現しやすい
プロマジシャンの前田知洋さんのnoteを読んでいたところ、大変興味深い記事がありました。今回の話にも通じるところがあり、一部引用します。
言葉と同じように、手足を動かしているとき、その人の心の中の感情が見えてしまうことは、あまり知られていません。
前田知洋「メソッド05 動きの美しさ」より
つまり、マジシャンが経験をつんで「安定のある動き」をしたとき、「オレの技はスゴイだろう!」という傲慢さがチラリと見えて観客に嫌われることがあります。
(中略)
つまり、言葉ではウソをつけたとしても、動作は本心を現しやすい。
言葉で良いことを言っていたとしても、行動で伝わる。これを避けるためには、その行動に注意するというよりも、自分自身の感情とその奥にある自己の内面を見つめ直すべきなのでしょう。
ミスディレクションと人格
最近、高木重朗氏の「魔法の心理学」を読んでいるのですが、ミスディレクションに関して興味深い文章がありました。ミスディレクションとは、注目してほしくない動作や場所から観客の注意をそらす技法のことですが、マジシャン自身に注目を集めることがあります。
(※実はミスディレクションの定義は上記ではないとの主張もあるのですが、その話は長くなるのでまた今度^^;)
演者自身に注意を引くには、何よりも、その演者自身に魅力がなければならない。アメリカのマジック研究家アル・リーチは、マジシャンとして成功するには、テクニックを学ぶ前に、人に好かれるようになるのが、最大の秘密だと言っており、カーネギーの名著『人を動かす』を読むことをすすめている。
高木重朗『魔法の心理学』p55より
マジックにおいても人格主義の原則は生きていると思っていましたが、これほどストレートにアドバイスしている人がいるとは知らず、驚きました。
「マジェイアの魔法都市案内」の箴言集にある、ライプチッヒの「ダイ、私は約50年マジックをやっているが、観客は紳士にだまされるのであれば悪い気はしないものだ。もし彼らが君をひとりの人間として気に入ってくれたら、君の演じるマジックも気に入ってくれるよ」も名言ですが、全く同じことです。
あらゆる仕事、芸、人生に通じるのはあなたがどういう人間であるか、ということです。その部分を突き詰めないと、テクニックなどの個性は生きてこないのです。
ちなみに、デール・カーネギーの『人を動かす』はまさしく名著です。人とどのように関わっていくのか、具体的な原則と方法論が満載で、すべての人におすすめです。
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コメント
[…] また、あまりに上手いテクニックは、観客が嫌がる原因になり得ます。これに関しては「人格の放射」で少し触れているので、興味があればお読みください。 […]